高校生の職業観、生活観が生活設計に及ぼす影響
〜都立高校生に対する調査の分析を通して〜
家政教育専攻 家政教育講座 生活科学分野
M02-1910坪内 恭子
高校生が将来、経済的基盤を確かなものにし経済的自立を獲得するためには、具体的・現実的な近未来の職業選択を中心とした生活設計を思い描き、その実現に向けて一歩を踏み出すことが重要である。しかしながら、家庭科の学習において生徒の多くが具体的な生活設計を描けないでいる。その原因一つとして、高校生の経済的自立の基盤としての職業が見えにくくなっていることがあげられる。
このような現実を踏まえ、本研究では生活設計の学習の基礎に職業の選択が出来ることが必要であると考えた。
具体的には高校生の「生活実態の認識」「職業観」「就労経験」「経済的自立意識」が、職業を中心とした生活設計の具体性にどのように影響を及ぼしているのか、そして、これらは「性別」によってどのように異なっているにかを検証した。
調査方法としては、2003年7月、東京都立の高等学校11校の第2学年の生徒約685名を対象にアンケート調査を行い、郵送による返送を依頼した。
その集計結果を分析した結果、「生活実態の認識」と「職業観」及び「経済的自立意識」は、「学卒後の職業」の明確さと「中年期の職業」の明確さ及び「中年期の生活費」をまかなう意識にそれぞれ程度の差はあるが影響している。
また、高校生の「就労経験」の大部分がアルバイト経験であるが、この経験は限定された条件の中で「学卒後の職業」と「中年期の職業」の明確さにプラスの影響を及ぼし、「中年期の生活費」をまかなう意識にはマイナスの影響を及ぼしている。
「性別」に関しては、積極的な「職業観」「経済的自立意識」は男子の方が高く、「生活実態の認識」においては、項目によって男女差が出た。「就労経験」については、女子の方が経験率が高いという結果が得られた。
この結果を踏まえ、高等学校家庭科の授業へ「生活実態の認識」の導入及び積極的な「職業観」と「経済的自立意識」の育成が必要であること述べている。また、「就労経験」については、現実に高校生が体験している「就労経験」は、「アルバイトの経験」が大部分であることから、高校生に対しもっと質の高い「就労経験」の機会提供の必要性を述べる。